MaXXXine マキシーン

6.6 FRI 公開

華やかな80'sハリウッドの暗黒面を描くスターダム・スリラー

監督・脚本:タイ・ウェスト

出演:ミア・ゴス、ケビン・ベーコン、ジャンカルロ・エスポジート、エリザベス・デビッキ、モーゼス・サムニー、リリー・コリンズ

『MaXXXine マキシーン』ネタバレ徹底解析(完全版)

『X エックス』から約2年、短いスパンでトリロジー最終章『MaXXXine マキシーン』が完成した。『X エックス』から6年後、舞台をテキサスからロサンゼルスに移し、ハリウッド・スターを目指すマキシーンが謎のシリアルキラーに命を狙われるという、主演ミア・ゴスを軸に豪華キャストを擁したクライム・スリラーにしてスラッシャー・ホラーだ。1980年代のL.A.という、ホラー・フランチャイズが席巻するビデオ全盛期を背景にしたこの3作目こそ、タイ・ウェストがトリロ ジーの中で最も作りたかった作品ではなかろうか。Xの数が「3倍」になった今作も過去2作以上に多くの細かいネタや秘密が隠されている。シリーズ最後の完全ネタバレ徹底解析をお楽しみください!

小林真里(映画評論家/映画監督)

ハリウッド大通り(Hollywood Boulevard)

ロサンゼルスの人気観光地、ハリウッドの中心はメトロのハリウッド/ハイランド駅の周辺で、ハリウッド大通り沿いにはアカデミー賞の授賞式が開催されるドルビー・シアターや蝋人形館マダ ム・タッソー・ハリウッド、ザ・ハリウッド・ルーズベルト・ホテル、歴史的な映画館エジプシャン・シアターなどが立ち並ぶ。劇中、マキシーンが住むアパートの住所はハリウッド大通り 6410。マキシーンがバスター・キートンの扮装をした男に襲われる路地もすぐそばにある。

ユニバーサル•スタジオ•バックロット

L.A.のユニバーサル・シティにあるユニバーサル・スタジオ・バックロットに現存するのが、ヒッチコック監督の『サイコ』(60)に登場するベイツ・モーテルと丘の上の家(サイコ・ハウス)。
『MaXXXine マキシーン』では、エリザベスがカートを運転してマキシーンをベイツ・モーテルの駐車場に連れていき、マキシーンはサイコ・ハウスの窓辺にパールの姿を見る。アンソニー・パーキンスが監督・主演を務めた『サイコ3/怨霊の囁き』(86)は、『MaXXXine マキシーン』の舞台となった1985年夏にこの場所で撮影された。

★グローマンズ•チャイニーズ•シアター

ハリウッド大通り沿いにある、興行師シド・グローマン協力のもと建てられた東洋風のエキゾ チックな巨大映画館。1927年に開館。座席数は932。2013年に中国の大手家電メーカーTLC集団が命名権を獲得し、現在のTLCチャイニーズ・シアターに名称が変更に。1944年から46年までアカデミー賞の授賞式の会場として使用された。ハリウッドのメッカとして『スピード』(94)や『アイアンマン3』(13)といった作品にも登場。数々の映画のプレミア会場としても使用されるが、『MaXXXine マキシーン』のラストでは『ピューリタンII』のプレミアが開催される。

★ハリウッド•ウォーク•オブ•フェイム

ハリッドのランドマークであり、ハリウッド大通りとヴァイン通りにエンターテインメント界で功績を残した俳優やミュージシャン、監督などの名前が入った星形のメダルが埋め込まれた歩道。

1960年の設立以降、2800を超える名前が埋められている。最初は1958年8月に女優ジョアン・ウッドワードや俳優バート・ランカスターを含む8人のプロトタイプがハリウッド大通りとハイランド通りの角に設置されたという。『MaXXXinne マキシーン』劇中ではサイレント期の人気女優セダ・バラの星が登場する(セダは『X エックス』に登場したワニの名前でもある)。

ワーナー•ブラザース ステージ15

劇中映画『ピューリタンII』の撮影が行われているのが、ワーナーのスタジオのステージ15。ポルノ業界から映画界に飛び込んできたマキシーンのオーディション・シーンもここで撮影された。映画冒頭、ステージの巨大な扉が開いてマキシーンが入ってくるシーンは、『X エックス』冒頭で巨大なワニがブロンドの女性を襲う壁画のストリップクラブの裏口からマキシーンが出てくる、彼女がショウビジネスの世界に初めて足を踏み入れるシーンに呼応している。

マリリン•チェンバーズとブルック•シールズ

レンタルビデオ店でレオンが、マキシーンとマリリン・チェンバースを比較して話すシーンがあ る。マリリン・チェンバースは、アメリカで初めて大規模に公開されたポルノ映画『グリーンドア』
(72)でセンセーションを巻き起こし、一躍ポルノ界のスターになった女優。その後、デイ ヴィッド・クローネンバーグ監督のボディ・ホラー『ラビッド』(77)に出演し映画女優への転
身を図るが、過去のポルノの経歴が重くのしかかり、メインストリームでの成功は叶わずポルノの世界に戻ることに。これはひょっとしたら、マキシーンの『ピューリタンII』公開後のキャリアの行く末を示唆しているのかもしれない。レオンとの会話でマキシーンは「スターだったのはブルック・シールズのほう」と返すが、シールズは『プリティ・ベイビー』(78)でヌードになり、その後ブレイクするが、その前にスラッシャー映画『アリス・スウィート・アリス』(76)に出演していた。

『サイコ』と獣の腹の中

『サイコ』のセットで、エリザベス・ベンダーがマキシーンに「あなたは野獣の腹の中に入った
(You made it to the belly of the beast)」とアドバイスをするシーンがある。映画『サイコ2』
(83)の中で、メグ・ティリー演じるキャラクター、メアリーがベイツ・モーテルで読んでいる本のタイトルは「In the Belly of the Beast」であり、この本は『サイコ3』(86)でもベイツ・モーテルの床の上で放置された状態で登場する。

1985年の大ヒット作『バック•トゥ•ザ•フューチャー』

ケヴィン・ベーコン演じる非道な探偵ラバットがスタジオ・バックロットでマキシーンを追い回すシーンで、2人がクロックタワー(時計台)の正面扉を駆け抜ける場面があるが、このタワーは
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の中でフィーチャーされていたもの。同作は『MaXXXie マキシーン』の舞台である1985年に公開され、この年アメリカでナンバー1の年間興行収入(1億 9058万ドル)を上げた大ヒット作であり、その後2本の続編が製作された。

ケヴィン•ベーコンと『フットルース』

ラバットを演じたケヴィン・ベーコンは、1984年に全米公開され年間興収6位を記録したヒット作『フットルース』で主演を務めブレイクしたが、その前に人気スラッシャー・ホラー・シリーズの1作目『13日の金曜日』(80)にも出演していた。2003年にはハリウッド・ウォーク・オブ・フェイムを獲得。ちなみに、ラバットのクリーム色のスーツとバンドエイドを貼った鼻はロマン・ポランスキー監督作『チャイナタウン』(74)のジャック・ニコルソン扮する主人公ジェイクそのもの。

80年代青春映画の金字塔『セント•エルモス•ファイアー』

劇中、ラジオから『セント・エルモス・ファイアー』(85)の、ジョン・パーが歌う同名の主題歌が1位になったというニュースが聞こえてくるが、ここから『MaXXXine マキシーン』の舞台は
「1985年9月」ということがわかる。『セント・エルモス・ファイアー』はジョエル・シュマッカーが監督した青春映画で全米で5週連続トップ10入りのヒットを記録。ロブ・ロウ、アンド リュー・マッカーシー、デミ・ムーア、アリー・シーディなど当時としては錚々たる面子が出演した。

ハリウッド•フォーエバー•セメタリー

マキシーンのポルノ女優仲間のタビーとアンバーが、ハリウッド・ヒルズで開催された謎のパー ティに参加した後、死体で発見される場所が、ハリウッド・フォーエバー・セメタリー。ジュディ・ガーランドやセシル・B・デミル、ルドルフ・ヴァレンティノ、ジョニー・ラモーン、ポール・ルーベンスらが眠る有名な墓地だ。サンタモニカ大通り沿いにあり、ハリウッドの中心部から車で5分程度の距離にある。映画の上映会やライヴの会場としても使用されている。

エンジェル

『MaXXXine マキシーン』に影響を与えていると思われる作品の一つが、ロバート・ヴィンセント・オニール監督のクライム・スリラー『エンジェル』(84)。成績優秀な15歳の女性高生モリーは夜はハリウッド大通りで娼婦エンジェルとして働き生活費を稼いでいたが、家族同然の仲間の 娼婦たちがシリアル・キラーに命を奪われ、彼女もついに命を狙われる、というストーリー。多くのシーンがハリウッドで撮影された同作は劇場以上にビデオが人気を呼び、その後2本の続編が製作された。

ハードコアの夜

もう一本、影響を感じさせるのがポール・シュレイダー監督のクライムドラマ『ハードコアの夜』
(79)。カリフォルニアで失踪したティーンの娘を探し出すため、米南西部に住む信仰心の厚い保守的なビジネスマンの父親は探偵を雇い、娘がポルノ映画に出演していることを知る。父親は彼女を助け出すためにディープなポルノの世界に足を踏み入れていく、というストーリー。

サスペリア2

タイ・ウェストはスラッシャー・ホラーの中で『13日の金曜日』や『エルム街の悪夢』(84)と並んで、ダリオ・アルジェント監督のジャーロ『サスペリア2』(75)が特にお気に入りであることを認めている。ショッキングな残酷描写を含む連続殺人事件を軸にした、時にスタイリッシュなミステリー・ホラーという点でも『MaXXXine マキシーン』と『サスペリア2』は共通しており、両作に登場する殺人鬼の黒いレザーの手袋もそっくり。ジャーロといえば、ニューヨークで女性ばかりを狙うサディスティックなシリアル・キラーを巡るルチオ・フルチ監督の『ザ・リッ パー』(82)のヴァイブも『MaXXXine マキシーン』は感じさせる。

80年代のブライアン•デ•パルマ監督作品へのオマージュ

『MaXXXine マキシーン』では、ブライア・デ・パルマ監督作品でお馴染みの分割画面やPOV(主観)ショットがフィーチャーされているが、マキシーンが殺人鬼(実父)を発見するハリウッド・ヒルズの家はデ・パルマの官能スリラー『ボディ・ダブル』(84)の家を彷彿とさせる。マキシーンがエリザベス・ベンダーと映画スタジオで落ち合うシーンは、『ボディ・ダブル』冒頭で主人公ジェイクがホラー映画の撮影終了後にスタジオ内を歩いているトラッキング・ショットへのオマージュだろう。両作ともB級ホラー映画の撮影シーンが登場する点でも共通している。またデ・パルマ監督、ジョン・トラボルタ主演の政治スリラー『ミッドナイト・クロス』(81)は、映画の音響効果マンの男が偶然録音していた音と写真を元に原始的な編集技術で殺人事件の証拠に辿り着 き、映画人として事件解決に迫るが、同じように女優マキシーンは自分の過去が詳細に記録されていることを知り、出演したポルノ『Farmer’s Daughter』のテープが届いたことで、自分が連続殺人鬼のターゲットであることを知り、犯人と対峙し事件解決に導く。

Tシャツ「Oui」

マキシーンが着ているOuiというロゴが入った白いTシャツだが、「Oui」はアメリカの男性向け ポルノ雑誌。Ouiはフランス語でYes(はい)の意味。元々は、1963年にフランスで「Lui」という雑誌が創刊され、72年にプレイボーイ・エンタープライズ社がアメリカ版の権利を購入し、ペントハウスやハスラーといったライバル誌が過激な方向に進むのに対抗すべく、同年10月に月刊誌として「Oui」を刊行。女性モデルの露骨なヌード写真やピンナップ、インタビュー記事や漫画が掲載された。一時期、CIAの活動を追ったルポタージュも載せていたという。82年のピーク期にはリンダ・ブレアやデミ・ムーアといったセレブリティのヌード写真を掲載し売上を伸ばす。90年代に入るとポップカルチャーや若者向けの題材にフォーカスするようになるが、2000年代に入ると売り上げが著しく低下、07年に廃刊に。

★★★ ピューリタンII

テクニカラーで1950年代を、現代と同じ腐った世界を描くホラー映画。劇場よりもビデオでヒットした悪魔憑きホラーの続編で、マキシーン演じるベロニカは人殺しだけど悪人ではない。ベロ ニカはクリント・イーストウッドとチャールズ・ブロンソンを足した感じのキャラクター。最高(A級)のアイディアが込められたB級映画。全米900館で公開されるメジャー映画でもある。

★★★ FXアーティスト=ソフィー•サッチャー

ソフィー・サッチャー演じるFXアーティストを見て「80年代の女性の視覚効果アーティストは珍しいな」と思ったが、例えば、時代は異なるが有名どころでは『大アマゾンの半魚人』(54)でコスチューム・デザインとメイクアップ・デザインを担当したミリセント・パトリックが存在する。が、彼女へのオマージュというわけではなさそうだ。ジャンル映画を中心に大活躍中のソフィー・タッチャーは『異端者の家』(24)に続き、今年1月に北米公開されたホラー『Companion』(原題)がスマッシュヒットを記録、NEON製作のニコラス・ウェンディング・レフン監督の最新スリラー『Her Private Hell』(原題)で主演を務めることも決定。サッチャーはミュージシャンとしても活動しており、昨年10月に5曲入りのEP「Pivot & scrape」をリリースした。『X エックス』では、今や大スターに上り詰めたジェナ・オルテガを起用するなど、新世代のスクリーム・クイーンを立て続けに抜擢しているのもこの『X エックス』トリロジーの特徴だ。

★★★ 80年代の女性ジャンル映画監督

『MaXXXine マキシーン』には、エリザベス・デビッキ演じる監督エリザベス・ベンダーが登場するが、80年代のジャンル映画界にはどんな女性監督がいたのだろうか。まず脳裏に浮かぶのがスティーブン・キングの原作を映画化した『ペット・セメタリー』(89)『ペット・セメタリー 2』(92)のメアリー・ランバート、ヴァンパイア・アクション『ニア・ダーク/月夜の出来事』
(87)のキャスリン・ビグロー、傑作音楽ドキュメタリー『ザ・デクライン』トリロジーや『ウェインズ・ワールド』(92)のペネロープ・スフィーリス。そして、スラッシャー・ホラー『スランバー・パーティー 大虐殺』(82)のエイミー・ジョーンズなど。

★★★ XXX

アメリカにおける映画のレイティング(年齢制限)は1968年の制限システム開始以降、「X」は大人向けの過激なバイオレンスやセックスシーンを含む映画につけられ、1990年以降は名称が変わり「NC-17」と呼ばれるようになった。X指定で公開された作品に『時計じかけのオレンジ』
(71)『悪魔のいけにえ』(74)『死霊のはらわた』(81)などがある。「XXX」はハードコア・ポルノの作品に与えられた(「XX」はソフトコア・ポルノ)。

★★★ 1985年はホラー映画豊作の年

『MaXXXine マキシーン』の舞台である、1985年には数多くの秀逸なホラー映画が製作され た。その代表的な作品を挙げると、ジョージ・A・ロメロ監督のゾンビ映画『死霊のえじき』、『エルム街の悪夢2』、人気シリーズ5作目『新・13日の金曜日』、ヴァンパイア・ホラー『フライトナイト』、ダン・オバノン監督のゾンビ・コメディ『バタリアン』、狼男映画の続編『ハウリング II』、マイケル・J・フォックス主演の狼男青春コメディ『ティーンウルフ』、スチュアート・ゴードン監督の80年代ホラーの金字塔『ZOMBIO/死霊のしたたり』、香港のアクション・ホラー『霊幻道士』、ダリオ・アルジェント監督、ジェニファー・コネリー主演の『フェノミナ』、ダリオ・アルジェント製作のイタリアン・ホラー『デモンズ』、官能的なSFホラー『スペースバンパイア』、人気コメディ・ホラー・シリーズの1作目『ガバリン』、そしてラリー・コーエン監督のSFホラー
『ザ・スタッフ』など。

セダ•バラとマキシーンのつながり

映画冒頭でマキシーンが足下のセダ・バラのウォーク・オブ・フェイムを見つめるシーンがある。セダ・バラはサイレント映画期の大人気女優であり、『クレパトラ(シーザーの御代)』(1917)や『サロメ』(1918)といったヒット作に出演。ファム・ファタール的なキャラクターや、男を誘惑する女性をよく演じることで「ヴァンプ(Vamp)」という渾名で呼ばれた。彼女が人気を呼んだ理由の一つは映画界における最初のセックス・シンボルであったことが挙げられる。バラもマキシーンもそのセクシュアリティで知られる女優であり、マキシーンの場合ポルノ映画でキャリアをスタートし、『ピューリタンII』のようなホラー映画にも出演するが、バラのようにセックス・アイコンとしてハリウッドでスターダムにのし上がる点で共通している。また短期間でスターになるところも似ており、バラは1915年の出演作は1本だが翌年10本に(彼女の出演作の多くは 1915年から19年の間に公開。26年に引退した)。マキシーンのその後のキャリアは劇中では語られないが、『ピューリタンII』でブレイクしバラのように成功することを、ここで示唆しているのだろうか?

ショー•ワールド

殺人鬼が訪れる覗き部屋「Show World」(お隣の映画館ビスタ・シアターでは『セント・エルモス・ファイアー』が上映中)は、かつてハリウッド大通り沿いにあった映画館「ザ・ケイブ・シアター」があった建物で撮影された(現在は男性向けクラブ)。1971年に開業したこの劇場はアダルト映画の上映館で、『Candy Goese to Hollywood』(79)や『Sweet Alice』(83)といったアダルト映画や、ドナ・ウィルクス主演『エンジェル』(前述)が撮影された。

『X エックス』とのつながり

映画終盤、マキシーンが控室のトレイラーで、映画俳優組合(SAG)の会員カードを使ってコカインを吸引しながら、鏡に映る自分に向かって「You’re a fucking movie star(あんたは映画スターよ)」と言い放つシーンは、シリーズ1作目『X エックス』冒頭のシーンでマキシーンがストリップ・クラブの楽屋で同じようにドラッグをやりながら「You’re a fucking sex symbol(あんたはセックスシンボルよ)」と自分に言い聞かせるシーンに呼応している。冒頭のオーディション会場外の看板には『X エックス』にも登場したXファクター(未知の才能)の文字も。

エンディング

事件の1ヶ月後、マキシーンと監督、スタッフたちが撮影前にスタジオに集まってモリーに黙祷を捧げる。マキシーンは夢のシーン(ドリーム・シークエンス)撮影用の、ベッドの上に置かれている自分の切断された頭部を見ながら、監督エリザベスに「次は何をやりたいの? みんなが注目してる」と聞かれ、「これを終わらせたくないだけ」と答えて映画は終わる。これは文字通りハリウッド・スターとしてのキャリアを順調に続けていきたいという思いと、おぞましい過去のトラウマや悪夢を忘れて現実を、未来を生きていたいという意味も込めているのかもしれない。もしくはただ単にあの映像は、手作りのプラクティカル・エフェクトへの敬意を込めた監督ウェスト流の80年代ホラーへのラヴレターということなのかもしれない。