星と月は天の穴

2025年12月19日(金)テアトル新宿ほかにて全国ロードショー

綾野剛
咲耶  岬あかり 吉岡睦雄 MINAMO 原一男 / 柄本佑 / 宮下順子  田中麗奈
 
脚本・監督 荒井晴彦
原作 吉行淳之介「星と月は天の穴」(講談社文芸文庫)


エグゼクティブプロデューサー:小西啓介 プロデューサー:清水真由美 田辺隆史 ラインプロデューサー:金森 保 助監督:竹田正明
撮影:川上皓市 新家子美穂 照明:川井 稔 録音:深田 晃 美術:原田恭明 装飾:寺尾 淳 編集:洲﨑千恵子
衣裳デザイン:小笠原吉恵 ヘアメイク:永江三千子 インティマシーコーディネーター:西山ももこ 制作担当:刈屋真 キャスティングプロデューサー:杉野 剛
音楽:下田逸郎 主題歌:松井 文 写真:野村佐紀子 松山仁 アソシエイトプロデューサー:諸田創 
製作・配給:ハピネットファントム・スタジオ 制作プロダクション:キリシマ一九四五 制作協力:メディアミックス・ジャパン ©2025「星と月は天の穴」製作委員会


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Trailer

Introduction
イントロダクション


荒井晴彦監督と
俳優 綾野 剛が織りなす
日本映画の真髄
 『ヴァイブレータ』(03)、『共喰い』(13)などキネマ旬報脚本賞に5度輝き、半世紀ものキャリアを誇る、日本を代表する脚本家・荒井晴彦。『火口のふたり』(19)をはじめ、自ら監督を務めた作品群では総じて人間の本能たる〝愛と性〟を描き、観る者の情動を掻き立ててきた。最新作『星と月は天の穴』は、長年の念願だった吉行淳之介による芸術選奨文部大臣受賞作品を映画化。過去の離婚経験から女を愛することを恐れる一方、愛されたい願望をこじらせる40代小説家の日常を、エロティシズムとペーソスを織り交ぜながら綴っている。
 主人公の矢添克二を演じるのは、荒井と『花腐し』(23)でもタッグを組んだ俳優 綾野 剛。着実にキャリアを重ね、名実ともに確固たる地位を築き上げてきた綾野が、これまでに見せたことのない枯れかけた男の色気を発露、過去のトラウマから、女を愛することを恐れながらも求めてしまう、心と体の矛盾に揺れる滑稽で切ないキャラクターを生み出した。
 そして、矢添を取り巻く女たち――大学生の紀子を演じるのは、新星 咲耶。女性を拒む矢添の心に無邪気に足を踏み入れる。矢添のなじみの娼婦・千枝子を演じるのは、荒井作品3作目の出演となる田中麗奈。綾野演じる矢添との駆け引きは絶妙、女優としての新境地を切り開く。さらには、柄本佑、岬あかり、MINAMO、 宮下順子らが脇を固め、本作ならではの世界観を創り上げている。1969年という日本の激動期を背景に一人の男の私的な物語を映す、滋味深き日本映画に、温故知新を感じることだろう。名匠 荒井晴彦の脚本から導き出された俳優 綾野 剛の真骨頂、映画界に一石を投じる<R18>の異色作が誕生した。

Story
あらすじ

「あなたは軀と恋愛してるのよ」
妻に捨てられたこじらせ男の、
滑稽で切ない愛の行方。
⼩説家の矢添克二(綾野 剛)は、妻に逃げられて以来 10 年、独⾝のまま 40 代を迎えていた。偶然に再会した大学時代の同級生(柄本佑)から、彼の娘が 21 歳になると聞いて時の流れを実感する一方、離婚によって空いた心の⽳を埋めるように娼婦・千枝⼦(⽥中麗奈)と時折り軀を交え、妻に捨てられた傷を引きずりながらやり過ごす日々を送っていた。実は彼が恋愛に尻込みするのには、もう⼀つ理由があった。それは誰にも知られたくない⾃⾝の〝秘密〟に、コンプレックスを抱えていることだった。不惑を過ぎても葛藤する矢添は、⾃⾝が執筆する⼩説の主⼈公・A(綾野=二役)に⾃分を投影し、20 歳も年下の大学生・B子(岬あかり)との恋模様を綴ることで、「精神的な愛の可能性」を探求していた。
そんなある⽇、矢添は画廊で⼤学⽣の瀬川紀⼦(咲耶)と運命的に出会う。車で紀子を送り届ける途中、彼⼥の〝粗相〟をきっかけに奇妙な情事へと⾄ったことで、⽮添の⽇常と心情にも変化が現れ始めた。無意識なのか確信的なのか……距離を詰めてきては心に入り込んでくる紀子の振る舞いを、矢添は恐れるようになる。
一方、久しぶりに会った千枝子から「若いサラリーマンと結婚する」と聞き、「最後に一緒に街へ出てみるか」と誘い、娼館の外で夜を過ごす。恋愛に対する憎悪と恐れとともに心の底では愛されたいという願望も抱く矢添は、再び一人の女と向き合うことができるのか……。

Cast
キャスト

綾野 剛
Go Ayano
矢添 克二やぞえかつじ
小説の中のA:結婚生活に失敗した小説家・自身が書く小説の主人公
咲耶
Sakuya
瀬川 紀子せがわのりこ
矢添と画廊で出会う大学生
田中 麗奈
Rena Tanaka
千枝子ちえこ
矢添のなじみの娼婦
柄本 佑
Tasuku Emoto
矢添の大学時代の同級生
宮下 順子
Junko Miyashita
娼館「乗馬倶楽部」の
女主人
岬 あかり
Akari Misaki
娼館「乗馬俱楽部」の女
MINAMO
 
小説の中のB子・大学生
綾野 剛
Go Ayano
矢添 克二やぞえかつじ
小説の中のA:結婚生活に失敗した小説家・自身が書く小説の主人公
1982年1月26日生まれ、岐阜県出身。2003年にドラマで俳優デビュー。2007年に『Life』で映画初主演を務め、ドラマ「Mother」(10/NTV)、連続テレビ小説「カーネーション」(11/NHK)で注目を集める。その後も『横道世之介』(13)、『そこのみにて光輝く』(14)、『新宿スワン』(15)、『日本で一番悪い奴ら』(16)などに出演、数々の映画賞に名を連ねるなどキャリアを積み上げてきた。近年の主な出演作に、「地面師たち」(24/NETFLIX)、『カラオケ行こ!』(24)、『でっちあげ』(25)などがある。今後は『愚か者の身分』(25・10/24)の公開を控える。
Comment
映画「花腐し」に続き、本作でも荒井監督の脚本を浴びる事ができ、主人公を通して言葉の美しさと滑稽さ、なにより文学への造詣に触れられ、とても稀有なひとときでした。とある小説を主人公が説明するシーン。噛めば噛むほど、呑めば呑むほど説明台詞を逸脱し、煙草を燻らせ酒を堪能する様に台詞を生み吐き出し、生きた言葉へと昇華する。脚本に導かれたその過程は、役者人生においても、唯一無二の体験でした。今思い出しても武者震いします。
映画「星と月は天の穴」どうぞ言葉の心地を召し上がってください。
咲耶
Sakuya
瀬川 紀子せがわのりこ
矢添と画廊で出会う大学生
2000年4月11日生まれ、東京都出身。『お江戸のキャンディー2』(17)で俳優デビュー。主な出演作に、「君が死ぬまであと100日」(23/NTV)、「笑うマトリョーシカ」(24/TBS)、『桐島です』(25)などがある。今後は、『金子文子  何が私をこうさせたか』(26・2月)、『粛々のモリ』(26年以降)の公開が控えている。
Comment
「純文学の登場人物になりたい」そんな願望が私にはありました。それがまさかこんなに早く実現してしまうなんて、全力で掴みに行った紀子という人物を演じる事が出来たのは私にとってこの上ない幸せです。現代の日本映画界に真っ向から反抗するような作品ですが、美しくもユーモラスな観る文学であると私は感じます。だからこそ多くの方に御覧頂きたいと心から感じます。綾野さんがどれだけ頼り甲斐のある素敵な先輩だったのか、荒井監督とご一緒した事がどれだけ貴重で特別な経験だったのか、あの夢のような時間、語り尽くせない程です。
田中 麗奈
Rena Tanaka
千枝子ちえこ
矢添のなじみの娼婦
1980年5月22日生まれ、福岡県出身。映画『がんばっていきまっしょい』(98)で俳優デビュー、初主演を務め、第 22 回日本アカデミー賞新人俳優賞などを始め数々の新人賞を受賞。『はつ恋』(00)、『幼な子われらに生まれ』(17)で多数の女優賞を受賞。近年の主な出演作に、放送文化基金賞ドラマ部門最優秀賞受賞「神の子はつぶやく」(23/NHK)、連続テレビ小説「ブギウギ」(24/NHK)、『福田村事件』(23)、『雪風 YUKIKAZE』(25)などがある。『ストロベリームーン 余命半年の恋』(25・10/17)、『ナイトフラワー』(25・11/28)の公開が控えている。
Comment
荒井晴彦監督とは、脚本を書かれた「幼な子われらに生まれ」、「福田村事件」でご一緒していました。
監督された「火口のふたり」、「花腐し」には惹かれていましたし、ご縁を感じてもいたので、お話しをいただいた時はびっくりしましたが、お声がけいただき大変嬉しかったです。
主演の綾野剛くんとの共演もとても久しぶりで楽しみにしていました。
剛くんは現場で色々とアイデアを出し、荒井監督もそれを楽しんでいるのがこちらにも伝わってきて、とても良い現場だと思いました。
役者としてだけではなく作り手として客観的にも現場を見ている視界の広い方だと改めて感じました。
千枝子に関して、彼女が何を想っているのかというのは、脚本を読んだ時点で直感的に感じましたが、もっと細かく腑に落ちていくように、、と丁寧に彼女の背景を作っていきました。
今でも千枝子を思い出すと胸がキュッとします。
年齢制限もあり、チャレンジングな作品だと思います。
作品を観ていただいたお客様からどんな反応がうかがえるのか、楽しみにしたいと思います。
柄本 佑
Tasuku Emoto
矢添の大学時代の同級生
1986年生まれ、東京都出身。『美しい夏キリシマ』(03) で映画主演デビューし、第77回キネマ旬報ベストテン新人男優賞などを受賞。近年の主な出演作に、「痛くない死に方』(21) 、『心の傷を癒すということ-劇場版-』(21) 、『先生、私の隣に座っていただけませんか?』(21) 、『真夜中乙女戦争』(22) 、『ハケンアニメ!』(22) 、『シン・仮面ライダー』(23) 、NHK大河ドラマ「光る君へ」(24) 、『野生の島のロズ』(25)、『ゆきてかへらぬ』(25)など。荒井監督作品には、『火口のふたり」(19) 、『花腐し』(23)に出演。
宮下 順子
Junko Miyashita
娼館「乗馬倶楽部」の女主人
1949年生まれ、東京都出身。1971年映画デビュー以降、映画・テレビドラマ・舞台で活躍。1978年、『雲霧仁左衛門』(78)、『ダイナマイトどんどん』(78)でブルーリボン賞助演女優賞、1979年、『赫い髪の女』(79)で報知映画賞主演女優賞を受賞。近年の主な映画出演作に『農家の嫁は、取り扱い注意!』シリーズ(21)、『新 デコトラのシュウ 鷲』(21)などがある。
MINAMO
娼館「乗馬俱楽部」の女
2000年生まれ、京都府出身。2021年にSOFT ON DEMANDよりAV女優としてデビュー。圧倒的な透明感と大胆さを併せ持つスタイルが特徴で、ランジェリーブランドRAVIJOURとのコラボレーションも話題となる。荒井監督とは、『花腐し』(23)に続き、2度目のタッグとなる。
岬 あかり
Akari Misaki
小説の中のB子・大学生
1999年生まれ、神奈川県出身。2歳で子役デビューし、ドラマ「七瀬ふたたび」(08/NHK)、「JIN-仁-」(09/TBS)、「ハガネの女」シリーズ(10〜11/EX)などに出演。主な出演作に、「ロマンス暴風域」(22/MBS)、「来世ではちゃんとします3」(23/TX)、「マルス-ゼロの革命-」(24/EX)などがある。
脚本・監督:荒井 晴彦
Haruhiko Arai
1947年生まれ、東京都出身。季刊誌『映画芸術』編集・発行人。日本映画大学名誉教授。若松プロの助監督を経て、77年の『新宿乱れ街 いくまで待って』で脚本家デビュー。以降、『赫い髪の女』(79・神代辰巳監督)、『キャバレー日記』(82・根岸吉太郎監督)など数々の日活ロマンポルノの名作の脚本を執筆。日本を代表する脚本家として活躍し、『Wの悲劇』(84・澤井信一郎監督)、『リボルバー』(88・藤田敏八監督)、『ヴァイブレータ』(2003・廣木隆一監督)、『大鹿村騒動記』(11・阪本順治監督)、『共喰い』(13・青山真治監督)の5作品において、キネマ旬報脚本賞を受賞した。5回受賞は橋本忍と並ぶ最多受賞記録である。その他、脚本を手がけた作品に、『神様のくれた赤ん坊』(79・前田陽一監督)、『嗚呼!おんなたち 猥歌』(81・神代辰巳監督)、『遠雷』(81・根岸吉太郎監督)、『探偵物語』(83・根岸吉太郎監督)、『KT』(02・阪本順治監督)、『やわらかい生活』(06・廣木隆一監督)、『戦争と一人の女』(13・井上淳一監督)、『さよなら歌舞伎町』(15・廣木隆一監督)、『幼な子われらに生まれ』(17・三島有紀子監督)、『天上の花』(22・片嶋一貴監督)、『あちらにいる鬼』(22・廣木隆一監督)、企画・脚本(佐伯俊道・井上淳一共同)の『福田村事件』(23・森達也監督)など。脚本・監督を務めた作品には、新人監督に贈られる新藤兼人賞を受賞した『身も心も』(97)、第67回読売文学賞(戯曲・シナリオ賞)を受賞した『この国の空』(15)、第93回キネマ旬報ベスト・テン1位の『火口のふたり』(19)、日本映画プロフェッショナル大賞作品賞・監督賞を受賞した『花腐し』(23)がある。
Comment
18歳だった。彼女もいないし、女の子の手を握ったのは高校の文化祭のオクラホマミキサーの時だけだった。それもそっと。’66年の「群像」新年号、吉行淳之介の「星と月は天の穴」、「女の軀に軀を重ねても欲情は起ってこない」男は、連れ込み旅館の枕もとの棚の下の埃を見る。「数週間にわたって抜け落ちた数え切れない数の男と女の毛が、絡み合っていた」「突然、はげしい欲情が彼の中に衝き上ってきた」 これ、なんか分かると思った。妻に裏切られ、愛とか恋とかいう情感を持ち込むのを拒否し、女を「道具」として扱おうと思っている男が「道具」に敗けてゆく小説だった。映画の仕事をするようになって、いつか映画にしたいと思ってきた。やっとです。 「精神という花が咲いている。引っこ抜くとその根っこに『性』がぶらさがっている」と吉行さん。引っこ抜いていきたい。

Staff
スタッフ

脚本・監督:荒井 晴彦

Original
原作

吉行淳之介
Junnosuke Yoshiyuki
「星と月は天の穴」(講談社文芸文庫)
芸術選奨文部大臣賞受賞作
「星と月は天の穴」は、1966(昭和41)年に雑誌「群像」にて発表。主人公・矢添克二が小説家であること、メタフィクション的に作品内で恋愛小説が綴られること、吉行自身が抱えていたコンプレックスを矢添にも投影していることから、より私小説的な一編とも捉えられる。ただ、連載時は矢添の内面を掘り下げるアプローチに注力したため、単行本化する際に〝ブランコを漕ぐ女性の情景〟といった文学的な表現を加筆。恋に臆病な中年男性が次第に一人の大学生・紀子に心惹かれていくさまを、哀愁とユーモアを織り交ぜながら柔らかな筆致で書き上げ、人間味あふれる作品へと昇華させた。なお、夫婦で飲んだ帰り道にふと妻・文枝がつぶやいたひと言から本作の着想を得た、とも。芸術選奨文部大臣賞受賞作品。
吉行淳之介 プロフィール
1924(大正13)年、詩人・作家の吉行エイスケとNHK連続テレビ小説「あぐり」のモデルとなった美容師の母・あぐりとの間に岡山県で生まれ、2歳から東京・麹町で育つ。病気がちだった青年期に文学にのめりこみ、戦後まもなく同人誌「葦」に参加。男女が紡ぐ関係性を生々しく描き、性を通じて人間の本質に迫る作風によって、戦後に文壇に登場した作家陣の一翼を担った。1954(昭和29)年に「驟雨」で第31回芥川賞を受賞。代表作は「不意の出来事」(65・第12回新潮社文芸賞)、「暗室」(69・第6回谷崎潤一郎賞)、「鞄の中身」(75・第27回読売文学賞)、「夕暮れまで」(78・第31回野間文芸賞)など。軽妙な随筆(エッセイ)や多彩なゲストと織りなした対談集も人気を博した。1979(昭和54)年、日本芸術院賞を受賞。映像化作品は、『砂の上の植物群』(64・中平康監督)、『暗室』(83・浦山桐郎監督)がある。1994年7月26日70歳で逝去。