NEWS
『箱男』石井岳龍監督・渋川清彦・川瀬陽太トークイベントレポート
9月7日(土)に、都内・ユーロスペースにて、絶賛公開中の映画『箱男』のトークイベントが行われ、石井岳龍監督、渋川清彦、川瀬陽太が登壇した。
本作で渋川は、箱男を目の敵にする浮浪者・ワッペン乞食を、川瀬は刑事を演じている。「本来ならば登壇できるような役ではないのですが…」と恐縮する二人に対し、「二人とも台詞がない役で申し訳なかった」と石井監督。昔からの知り合いである石井監督と川瀬だが、実は協働するのは本作が初という。渋川は『鏡心』(04)で石井監督と出会った。「90年インディーズ映画のみんなのパイセン」である石井監督と、ともに映画界を盛り上げてきた川瀬、渋川3人の『箱男』映画談義が繰り広げられた。
この日上映を観ていた渋川は「2回目観てもよく分からないけど、すごい映画!!」と強調し、「特に今日は音が印象的でした」と語る。「永瀬さんが海辺を歩いているシーンの“ズンザッザッ ズンザッザッ”という足音が、どういう歩き方をしているかとても気になりました」。石井監督は「今回、音響効果・録音・音楽のサウンドデザインのチームが極まっていました。音の職人や技術者なのだけど、みんなそれぞれが音楽家で、一種のバンドみたいなもので、良いグルーヴが作れています。あのシーンは実際観ていて私自身も陶酔しました」と音楽チームの仕事を絶賛。
今回台詞がない役であった渋川、川瀬であるが、その登場シーンは台詞がないことを忘れる程に印象を残すものとなっている。川瀬のシーンについて「顔がケヴィン・ベーコン的ですごく恰好よかったです」という渋川、「ウォーレン・オーツをイメージしていました」という監督に対し、川瀬は「大体ガソリンスタンドに立っている役の男ですね」と笑いを誘う。
渋川のワッペン乞食に関しては、「脚本家のいながききよたかさんがものすごく力を入れていました。スリングという武器がはいながきさんのオリジナルです。似合っていました」と石井監督。「あの武器の扱いは難しかったです」と渋川。
ワッペン乞食VS箱男以外にも、箱男VS箱男シーンなど様々なシーンでアクションが見どころの本作であるが、すべての殺陣はアクション監督の小池達朗が動きをつけた。
石井監督は「箱男VS箱男のアクションが監督史上一番難しかったです。コンテの書きようがないので…」。それに対し、渋川は「冷静に見て、箱同士が罵り合っているのは最高ですよね」、川瀬は「箱がズサーと滑る瞬間が面白いです」と、注目の箱男VS箱男シーンを語る。アクション監督の小池をはじめ、最高のスタントチームが成した技は必見。
27年前越しの映画化に関して、川瀬の「27年前と変わっている部分はあると思いますが、前からこんなにアクション映画であったのですか?」という質問に対し石井監督は、27年前よりも前に脚本は書いていて何度も書き直しています。27年前はドイツとの合作映画で、アクション映画としていましたが、実はミュージカルシーンもあったんです。あの時の台本はあれ以来開いていない“幻の台本”になっています」と明かす。そして27年の時を経て「最終的には原作に忠実な形になりました」と石井監督。こうして『箱男』の最終形態がついに公開されたのだ。
最後に監督より、「大作でもないしインディーズのような映画ですが、キャスト&スタッフ一同がみんなで映画をつくるんだという一体感で、良いグルーヴが生まれました」と『箱男』チームに敬意を表し、27年越しの『箱男』の完成と公開の喜びをかみしめた。
映画『箱男』はまだまだ絶賛公開中!ぜひスクリーンでご鑑賞を!