COMMENT
絶賛の声、続々!
何も考えず、ただ目の前のことを楽しんでいた子ども時代に戻りたくなる作品。
瞬きする間、世界はどんな姿をしているのだろう。
体温に触れたポラロイドがじとりと顔を出すように
まばゆいかけらを集めて、私も記憶の海を泳ぎたい。
娘らしく父らしく、ましてや女らしく男らしくするなんて耐え難い。
そんなかつての親子の時間をわかりやすい思い出話に整理してしまうなんてあり得ない。
そのかわりこの映画は、眩しすぎる空や暗すぎる海を忘れない。
水中のように不安定なこの世界の明滅から目を逸らさない。
そして、驚くほど繊細で多様な色で編まれている世界を見逃さない。
まるで鮮烈な短編小説のよう。
大人になった主人公が思い出す眩い夏は、
時折、重く苦しい澱のようなものに、ちりちりと侵食される。
それでも、悲しみで補正されたはずの時間が、永遠のように輝いている。
隣から聞こえる寝息が、退屈な午後が、涙が出るほど愛おしい。
人生に一度訪れるかどうかの輝くような時間に浸らせてくれる100分間。
なのに、強烈に寂しい。
生を写せば自ずとその終わりも映り込んでしまう映画そのもののような映画だった。
何気ない親子のやりとりに愛を感じて頬を緩めるたび、
どこかで「この幸福に終わりが来る」ことを考えてしまう。
その不穏な緊張を最小限の情報で描ききる勇気に、感服していました。
幼い頃に父と過ごしたほんの少し日常とはちがう特別な時間。
でもなんてことのない些細な時間。
大人になってもあの瞬間にふと救われることがあって
そんなかけがえのない煌めきが詰まっている映画。
何度も思い返したくなる愛しい記憶たち。
淡々としていますが、見た後余韻がずっと残るちょっと不思議な映画です。
親の記憶というものは誰でも年と共に微妙に変わるものなので、深いところに響きます。
娘役のフランキー・コリオの演技は演技と思えないほどリアルです。
彼女が映画にしなければ分からなかった父の苦悩と悲哀。
それが物語として映し出されたとき、
二人のバカンスの思い出は映画を見る私たち自身の記憶となり、
その輝きの消失も、永遠に私たちのものになる。
愛する父のすべて。
わからなくていい。
ただ傍で想いたい。
過去をいまの心で抱きしめる傑作。
また一人、優しい才能に出会った。
触れたら壊れてしまいそうな、儚くも美しい映画。
何気ないシーンで涙がこらえきれなかった。
優しさの中に複雑な感情が見え隠れする
ポール・メスカルの物言わぬ演技に心酔。
カモン、カモン、カモン・・・
ブラーの「テンダー」が過ぎ去った愛の破片を手繰り寄せる祈りの歌だったように、
この映画は消されてしまった小さな記憶の破片を手繰り寄せる。
不意に訪れた夏の静けさ、空白の中に。
この祈りは新しい。そしてたまらなく愛おしい!
父と娘で過ごした遠き日の休日は、ありふれて他愛もない。
だからこそ、その親密で柔らかな温もりと、静かに抱える悲しみは、
時が流れても心に保存され続ける。
物語らぬことで多くを語る、本作の繊細な叙情性は、時間が経つほどに染みついて離れない。
人生の大切な思い出を映像として復刻する。
そんな装置があったら、この作品のようになるのではないか。
観終わった瞬間、静かに優しい空気に包まれた。
そして、それから何日か経っても、ふとした瞬間に父と娘の“描かれなかった”時間に
思いを巡らせ続けている。
どこかひっかかる想い出。
それが親のこと、それも自分が親の歳になり振り返るとき。
想い出はひときわ鮮やかにきらめく。
最高にカラフルでクィアな一作。
親であっても脆く未熟で、完璧ではないことを知った日を覚えている。
それから初めて“親”ではなく1人の人間として向き合うようになった。
主人公の追想によって自分の記憶まで引きずり出された。
お気に入りの傷跡をなでるような愛着をこの映画に感じている。
まるで日焼けのように思い出がヒリヒリと胸の奥を焦がす。
もう戻らない過ぎ去った父娘の愛おしい時間は、ハンディカメラの映像のように淡くてぼんやりしている。
でも、それがローションのようにソフィの記憶を癒すのかもしれない。
はじめから最後のショットまでずっと切なくて胸が苦しかった。
父娘の親密な旅を通して、おぼろげに見えてくる。
心の中に沈み、渦巻いて、ときに侵食さえする闇が。その壮絶なエモーションが。
衝撃的だった。どれほど深いところまで、この映画は人を引きずり込むのか?
愛する大切な人と過ごせる時間は、永遠じゃない。
過去と現在、記録と記憶――
幸せなはずの瞬間を襲うカタルシスに、
そしてその脆く、儚い美しさに、誰もが涙するだろう。
若き日の父はあの時何を考えていたのか。
多くを語らなかった父の姿が、今多くを語りかけてくる。
思い出は古いビデオ映像のように粗く、淡い陽光のように心に染み込む。
ポール・メスカル演じる父親の「何かを考えている顔」は、
わかりそうでわからない、なんの意味にも落ち着かない途轍もなく良い顔だ。
その顔は、「何を考えているのか知りたい」と他者の心を想像する眼差しによってこそ輝きを放つ。
それは、大人になってホームビデオの映像を見返す娘の眼差しであり、私たち観客の眼差しだ。
家族旅行中に、ひとりになりたくなる。
にぎやかな海やプールで、急に悲しくなる。
音楽が鳴り、まわりが踊るクラブで、とてつもない孤独を感じる。
そんな思い出がある人に見てみてほしい。
あのとき、父はなにを思っていたのか。
いま、娘の目にはなにが映っているのか。
人生の見え方が、完全に変わってしまった。
幼い時は親に素直に遊んでもらい、ただ楽しくて当たり前だった日常が、大人になるといつのまにか消えかけている。
その時はなにも分からなかったけど、その日常が実は自分にとってとても大切で、
愛おしい時間であったのだと気付かされました。
初めて感じた淡い想い。無邪気な嬉しさが感覚と共に蘇り、心にあたたかいものが溢れました。
30歳の父が抱える闇を、11歳の娘・ソフィが理解することはできない。
もちろん、父を闇から救うことだってできない。
たとえ家族であれども、その人の苦しみはその人自身にしか分からないのだから。
だけど、ビデオカメラが捉えたソフィと父の一夏の煌めきは、確かにそこに在った。
それだけでもう十分じゃないか、と思えたのだ。
少ない言葉数、見つめる目線、見つめ返す目、ふとした後ろ姿。
小さな情報でこんなにもたくさんの気持ちが溢れるとは思いませんでした。
本作の上映劇場であるスタッフの皆様にも
ひとあし早くご鑑賞頂きました!
ふたりにとって何気ない時間。
ふたりにとってかけがえのない大切な時間。
あの頃は気づけなかった想いに、愛しくも切なくて涙があふれました。
ポール・メスカルはもちろん素晴らしいが、新星フランキー・コリオが本当に愛おしい!
出会えたことに感謝!近年稀にみる深く心に刺さったベストムービーです。
ポール・メスカルの切ない表情や演技に注目!
鑑賞後、胸が締め付けられる気持ちになりました。
あの時、父はなにを思っていたのか…
鑑賞後も考えさせられ、時間が経っても心に残る作品です。
観終わった後に襲われる凄まじい余韻と考察。
今も心はビデオカメラに取り残されています。
光と影、陰と陽、リゾート地の対照的な情景と終わってほしくないと思う瞬間が、
終わる瞬間...こんなにも心揺さぶられるとは思いませんでした。
こんなに映画を観てるのに、また新しい才能に出会ってしまった!
主演のポール・メスカルと監督のシャーロット・ウェルズ。
これだから映画はやめられない。
父娘の他愛のないやりとり、些細な喧嘩、
どのシーンも愛おしくてずっと観ていたかった。
娘の記憶が断片になり遠のいていっても、
二人の間の親密さと温かさだけは損なわれずあり続けるんだと思う。
そんなことを考えると泣けて泣けて仕方なかった。
“父と娘”を描いた作品には名作が多いが、間違いなく今作もその中に仲間入りするだろう。
あの名曲での終盤のシーンだけでそう言い切れる。
たとえ記憶が薄れようとも、残された映像には幸せの形と確かな愛が残っている。
「全人生で一番サイコーだった」思い出だって。
冒頭から引き込まれ久しぶりに会った父親に対する緊張やよそよそしさをリアルに感じました。一緒に過ごす時間がとても愛おしかったです。
自分の父親が亡くなって時が経ちますが、ソフィのように、父としてではなく一人の人間としての姿を見ることができたらどれほど良かったかと思います。
ビデオテープに残されていたのは、年頃のイノセントな時間であり、
眩いラストリゾートでの日々だった。
ホテルへの帰り道、繋いだ手からこぼれ落ちる痛みにソフィは、あの頃の僕は気が付かない。
記憶の中の父はいつも笑っていたから。今の僕なら掬い上げることは出来るだろうか。
鑑賞後の苦い気持ちには、少しの清涼感が混じっていて、レモンソーダの味がした。
二人の表情や眼差し、二人の会話でどんどん二人の距離が近くなるのと同時に映画の世界に引き込まれていく、そしてラストのワンショットに打ちのめされた。
個人的にはバリー・ジェンキンスのプロデュースってだけで信頼します。
俳優も映像も音楽もすべて最高でした。
娘の視点、父親の視点。
それぞれの立場が抱える生きる上での葛藤と喜び。
世代ごとの感性を繊細に表現した一作。
どういう映画だと説明が難しいのだけれども、
見終わった後のこの何とも言えない感動は久々に味わう物でした。
深い深い余韻に浸れる傑作です。
幼い頃、父と過ごした眩しい夏の記憶なのに、
20年後のソフィが辿る記憶は、湿り気があり、なんだか切ない。
でも、そこには確かな愛があった。みんな色んなことを背負ってる。
それでもソフィのように大切な誰かと同じ空を見れば
救われる気持ちを感じられればなんとかやっていけそう。
わたしも上を向く、癖をつけよう。
あの音、あの光、あの匂い、あの声、あの顔、あの夏の日。
誰もが自分の記憶を呼び起こされるに違いない。
一度観たら、ふとした瞬間にこの映画の事を懐かしく思い出してしまう。
そんな宝物のような映画です。
もう越えられないと思う夜があっても朝は来て、太陽の下で娘と遊ぶ。
その姿は亡き父を恋しく思った事がない私の首根っこを掴み、
思い出と向き合わせ、泣かせた。
父に会う事が叶わないなら、今を生きる人にこの映画を届けたい。
大人へと背伸びする娘と、大人であることに戸惑う父。
ひと夏の記憶に見え隠れするすれ違いと真実の断片が切なく、そこにあった確かな愛の暖かさに涙を誘われました。
父とふたりきりで過ごした11歳の夏。
テープに残るたわいもないやりとりや、淡々と過ぎる時間の中に感情が溢れる。
日常にふと現れる孤独の支えになるのは、あの夏の記憶なのかもしれない。