INTRODUCTION
パリの街で出会うはずのないふたりの男女の恋物語をドラマチックに描いたのは、フランスのカリスマアーティスト、マチアス・マルジウ。独創的な世界観で音楽、小説、映像とマルチな活躍を見せ、フランスのティム・バートンと言われる鬼才。自身の小説をアニメーション映画化した『ジャック&クロックハート鳩時計の心臓をもつ少年』で監督を務め、本作も自身の原作の映像化2作目となる。また監督が率いるバンド、ディオニソスが手掛けるサウンドトラックは、人魚と人間の恋模様を軽やかに歌い上げ、今にも踊り出したくなるようなナンバーが目白押し。そして物語を彩るのは、フランスで活躍する豪華キャストたち。繊細で優しいガスパール役に、リーバイスやヒューゴ・ボスのモデルとしても活躍していて、『パリ警視庁:未成年保護部隊』 (11)、『ダリダ~あまい囁き~』(17)などに出演しているフランスを代表する人気俳優ニコラ・デュヴォシェル。愛らしいルラを演じるのは、『青い欲動』(15)で鮮烈なデビューを果たした新進女優マリリン・リマ。そして、ふたりの恋を見守るガスパールの隣人ロッシをペドロ・アルモドバル監督作品の常連でもあるロッシ・デ・パルマがチャーミングに好演。ほかロマーヌ・ボーランジェ、チェッキー・カリョらフランスの名優が脇を固め、忘れがたいアクセントになっている。恋を知らぬまま、美しい歌声で男性を魅了し、恋に落ちた男性の命を奪ってきた人魚ルラ。失恋から恋を捨ててしまった心優しい男性ガスパール。ふたりの男女がパリで出逢い、恋に落ちる。これまで数々のラブストーリーの舞台となってきた恋の都パリで繰り広げられる、美しい人魚のラブストーリー。
STORY
記録的な雨による大増水で、浸水してしまったパリ。セーヌ川に浮かぶ老舗のバー“フラワーバーガー”のオーナーの息子で、ウクレレを持って歌うパフォーマー“サプライザー”として働くガスパールは、ある夜、傷を負い倒れていた人魚を見つける。彼女の名前はルラ。ルラは、美しい歌声で出会う男性を例外なく虜にし、恋に落ちた男性の心臓を破裂させ命を奪っていた。歌によって人間から身を守ってきたルラは、ガスパールの命も奪おうと歌をうたうが、過去の失恋の経験から、恋する感情を一切捨て去ってしまったガスパールには、その歌声が全く効かなかった。ルラを懸命に看病するガスパール。その彼の献身的な優しさに、ルラは次第に心惹かれていくが、人魚であるルラは2日目の朝日が昇る前に海に帰らねば、命を落としてしまうという。と同時に、ガスパールの体に異変が起こる。胸がギュッと締め付けられるように苦しいのだ。そんな中、ルラに夫を殺された女医のミレナがルラを探しあて……。パリで出会ったふたりは、無事に恋を成就させることが出来るのか――?