INTRODUCTION
1978年、18歳の女子高生が文壇を揺るがした――
多感な少女期の心の戸惑いを鮮やかにとらえ、“文学上の事件”と評された衝撃作。

原作は70年代を舞台に描かれる中沢けいの小説「海を感じる時」。1978年に著者が18歳の時に応募し第21回群像新人賞を受賞、当時は現役女子高生が書いたことに、選評者の一人である吉行淳之介氏が「18歳の作者が、感傷に流されず、背伸びもせず、冷静に対象を眺める力をもっているのは、その年齢とおもい合わせると、大したことなのである。また、その少女の描く18歳の子宮感覚は、清潔で新鮮であり、そういう表現が作品に登場したということは文学上の事件といえる」と評した。またスキャンダラスでセンセーショナルな文学として一躍世間の話題を呼び、ベストセラーとなって凄ざまじい反響を巻き起こした。一人の少女から大人の女性へと成長していく繊細な内面を精緻な描写で抉り、女と男、家族とのつながりを豊かな感性で描き、今もなお普遍的な作品として高く評価されている。

恵美子と洋の出会いは高校の新聞部だった。ある日、授業をさぼり部室で暇つぶしをしていた恵美子は、先輩の3年生の洋と顔を合わせる。突然、洋はここで恵美子にキスを迫るが「決して君が好きな訳じゃない。ただ、キスがしてみたい」からだと。衝動的に体をあずける恵美子だったが、あくまで洋は「女の人の体に興味があっただけ。君じゃなくてもよかった」と言い放ち、拒絶する。それでも洋を追い求めていく恵美子だが・・・。
主演は市川由衣。少女から女へと変貌を遂げようとする難役、恵美子役に挑戦。美しくも切ないラブシーンを披露する等、大胆なシーンにも果敢に体現し、一途な想いながら葛藤する心の揺れを力強く演じ今までのイメージを一新、渾身の力を込めて挑んでいる。相手役の洋には、映画主演・出演作やテレビドラマ、舞台、CMと多岐にわたり活躍する若手実力派俳優、池松壮亮。艶やかな作品が続く中、本作でも恵美子を翻弄しながらも恵美子への想いを昇華させ、堂々たる演技で観客を魅。本作が初共演の二人は、恵美子と洋の後戻りできない恋愛を生きる二人の世界を見事に演じてみせた。監督は『blue』(03)、『僕は妹に恋をする』(07)の安藤尋。その繊細な表現力と確かな演出力で、揺れ動く登場人物たちの心の機微に迫った。

STORY
恵美子(市川由衣)と洋(池松壮亮)の出会いは高校の新聞部だった。ある日、授業をさぼり部室で暇つぶしをしていた恵美子は、先輩の洋と顔を合わせる。突然、洋はここで恵美子にキスを迫るが「決して君が好きな訳じゃない。ただ、キスがしてみたい」からだと。衝動的に体をあずける恵美子だったが、あくまで洋は「女の人の体に興味があっただけ。君じゃなくてもよかった」と言い放ち、拒絶する。幼い頃に父親を亡くし母親に厳格に育てられ愛を知らずに育った恵美子はそれでも洋を求め、「体の関係だけでもいい」と会うたびに自ら体を差し出す。月日はたち、洋は進学のため上京し、恵美子も近くにいたい一心で東京の花屋で働いていた。こんな関係に寂しさを募らせながらも次第に「女」として目覚めていく自分に気付き始める。そして恵美子はどんな形でも必要とされたいと願いながら洋に寄り添い傷つき反発をするが、ある時から洋との立場が逆転していく…