INTRODUCTION
作家・井上ひさしが生前やりたい事として記していた原案を基に、こまつ座にて上演され人気を博した舞台「木の上の軍隊」が映画化。
本作で主演を務めるのは、映画、ドラマ、舞台と多岐に渡る活躍を見せ、俳優として名実共に確固たる地位を築き上げてきた堤 真一。戦争下の厳しく恐ろしい上官・山下が木の上の生活で変わっていく様を、悲惨さの中にユーモアを交えて演じきる。
堤と並んで主演に抜擢されたのは、ジャンルを問わず幅広い役柄に挑み続ける山田裕貴。沖縄で育ち、一度も島から出たことがない純朴な新兵・安慶名を嘘のない眼差しで、真っ直ぐに表現。山田が演じる安慶名を通して体感する沖縄戦は、まさに語り伝えていかねばならない事実に見える。
初共演となる堤と山田だが、「難しい役だと色々考えていたけれど、真っ直ぐな安慶名そのものの山田くんのおかげで二人だからこそ生まれたものをそのままやっていけばいいんだと思えた」(堤)、「堤さんの実在する力が凄く、お芝居せずに反応できる、役を生きるということができた」(山田)と互いに信頼も厚く、育った環境も地位も年齢も違う山下と安慶名の対峙を見事に体現。木の上で死への恐怖と日本兵としての使命感に葛藤しながら生き抜いていく様を、リアリティをもって魅せていく。
メガホンをとるのは、原作のモデルとなった実在の日本兵と同年代で、沖縄出身の監督・平 一紘。本作の映画化にあたり「僕は、沖縄で生まれ育ち沖縄戦について沢山知っているつもりでした。しかし、この映画を撮る為にあらゆる角度で取材し、あの戦争を見つめた時『木の上の軍隊』で皆さまに見せたい景色が見えてきました。沖縄で撮ったということ。伊江島で撮ったということ。生きた樹で撮影したこと。それらは全てスクリーン上で皆さまに肉迫するでしょう。本当に起きた事の恐ろしさと、素晴らしさをご覧頂きたいです」と想いを語る。沖縄在住のスタッフを中心に組まれた制作陣と共に、全編沖縄にて撮影、木の上のシーンは実話と同じく伊江島で、実際に生えているガジュマルの木を活用し撮影を敢行した。
太平洋戦争終結から80年を迎える2025年。当時を語れる戦争体験者がいなくなっていく時代に向かう中で、沖縄発信で、日本で熾烈な地上戦が繰り広げられた沖縄戦を伝承する映画が制作されることは、大きな意義があると言えよう。