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末日聖徒イエス・キリスト教会
アメリカで誕生したキリスト教系の新宗教。一般にはモルモン教と略称される。創始者ジョセフ・スミスが独自に神の啓示を受けたことで1830年に設立された。キリスト教のほとんどの宗派が三位一体説を認めるのに対し、同協会はそれを否定する。また、キリストの再臨を強調する点では、他のキリスト教系の新宗教と共通する。『モルモン書』という独自の聖典を持ち、本部はユタ州のソルトレイクシティにある。積極的な布教活動を実践してきたところに特徴があり、日本にも宣教師が多く送り込まれた。純潔や安息日の重視など戒律が厳しいことで知られ、酒やカフェインの摂取、婚前交渉や自慰などが禁じられている。初期には一夫多妻を主張したため、社会的に問題となった。
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ジョセフ・スミス(1805~44)
末日聖徒イエス・キリスト教会の創始者。既存のキリスト教会のあり方に対して疑問を持つようになり、イエス・キリストや洗礼者ヨハネが彼のもとに現れるという体験をする。古代アメリカの預言者モロナイの記した金版を掘り出し、翻訳して聖典である『モルモン書』を作った。スミスは、初期のキリスト教会のあり方に戻ることを主張し、至福の時代である千年王国の到来を予言したが、一夫多妻を実践したことで迫害を受け、暴徒に殺害された。ブリガム・ヤングが後継者となり、その時代にソルトレイクシティに移住して拠点とする。その時代の教団の姿はシャーロック・ホームズのシリーズ『緋色の研究』にも描かれている。
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モロニ/モロナイ
ジョセフ・スミスのもとに現れた天使。金色の版に刻まれた聖なる文書が家の近くの丘に埋められていることをスミスに告げる。それを掘り出したスミスは、古代の変体エジプト語で一般の聖書が伝えるのとは異なる伝承が記されているのを知り、翻訳して末日聖徒イエス・キリスト教会の聖典『モルモン書』を作った。『モルモン書』では、預言者エレミヤの時代にエルサレムからアメリカ大陸に渡ってきた一族の存在が記されると同時に、イエス・キリストもまたアメリカを訪れたとされている。
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魔法の下着
末日聖徒イエス・キリスト教会の信者が着用する独特の下着のこと。元は上下一体だったが、現在では上下に分かれ、下は膝上丈と長い。教会では、この下着を正しく身に着ければ、誘惑や悪から身を守ってくれるとされている。
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回復
末日聖徒イエス・キリスト教会独特の宗教用語。イエス・キリストが地上で活動していたとき、神権を授けられ、信仰者として正しい行動ができた。しかしその後、神権は失われた。これを回復したのがジョセフ・スミスであったとされる。
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神の預言者 アダム・ノア・アブラハム・モーセ
キリスト教では神からの啓示を受けた人物を預言者として捉える伝統がある。末日聖徒イエス・キリスト教会もその伝統の上にあり、特にイエス・キリスト以前の預言者としてアダム・ノア・アブラハム・モーセを重視する。
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サイエントロジー
1954年にアメリカ・ロサンゼルスで最初の協会が創設された宗教団体で、トム・クルーズやジョン・トラボルタといった著名人が入信していることで知られる。サイエントロジーという名称は、知識を意味するギリシア語のscientと学問を意味するlogosをあわせた造語である。創始者はSF作家でもあるロナルド・ハバード。第2次世界大戦の際に負傷し、そこから独自に心身医学的な治療法「オーディティング」を編み出したことが、サイエントロジーの発足に結びついた。
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欽定訳聖書
代表的な英語の聖書のこと。1611年に刊行された。欽定とは王の命令によって定められたものを意味し、欽定訳聖書はイングランド王だったジェームズ1世が、自国語で聖書が読みたいとするピューリタンの請願を受け、多くの学者を集めて作り上げた。格調高い翻訳として高い評価を受け、広く普及した。
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ゴードン・B・ヒンクレー
末日聖徒イエス・キリスト教会の第15代の大管長。1995年からその任にあり、2009年に97歳で亡くなるまで、その任にあった。一般のメディアの取材を積極的に受け、教会を開かれたものにすることに貢献した。
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道教/胡蝶の夢
中国の道教は老荘思想とも呼ばれ、中国の春秋戦国時代の思想家である老子と荘子の教えを元にしている。「胡蝶の夢」は、荘子の著作に出てくる説話で、自分が蝶になった夢を見た荘子は、今夢のなかで蝶が自分になっているのではないかと疑った。ここから、夢か現実かはっきりわからない様や、人生の儚さをたとえる言葉としても使われる。
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避妊インプラント
小さな棒状のロッドを二の腕の皮下に埋め込む避妊具。ホルモンの作用で高い避妊効果を得られ、月経困難症の治療にも用いられる。日本では未承認の薬剤だが、欧米など100カ国以上で使用されている。なお、末日聖徒イエス・キリスト教会では婚前交渉や避妊が禁じられている。
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天国・エルサレム/地獄・ルシファー
イタリアの詩人ダンテの叙事詩『神曲』には地獄が登場するが、それはすり鉢状になっており、エルサレムの下にあるとされる。地獄の最下層に永遠に幽閉されているのが堕天使ルシファーである。キリスト教美術においては、この作品を元にした地獄の姿が様々に描かれてきた。
監修:島田裕巳(宗教学者)