退役軍人のルドヴィ・ケーレン大尉。 軍隊しか知らない孤独な彼がほんの些細な野心からはじめた「仕事」を通じて、 彼は他者に出会い、対立し、愛を知り、別れも知ってゆく。自らの人生を開拓してゆく。 マッツ・ミケルセンの巧みな「陰影」によってこのケーレンという重層的な人物が見事に表現されています。
濱田轟天(「平和の国の島崎へ」原作)
絵画のような美しい画面の中で、 本編中のマッツ・ミケルセンはずっと(ほとんど)真顔です。 怒り、焦り、悲しみ、絶望、優しさ、希望、キャラクター… これらを真顔で完璧に伝えてくれます。
瀬下猛(「平和の国の島崎へ」漫画)
18世紀のデンマーク。不毛の荒地に辿り着いた疑似家族。 己の出自にトラウマを抱えた退役軍人。領主から逃げ出して来た使用人の女。親に捨てられた異国の少女。 国からも見放された過酷な荒地で、様々な妨害と暴力に阻まれながらも、大地に実らせるものとは? 荒地と貧窮の中で魅せるマッツの枯れた“佇まい”がなんとも魅力的。 黄金期のイーストウッドを思わせる燻し銀の色気がある。 これぞ荒地に芽吹いたマッツの“新芽”だ。
小島秀夫(ゲームクリエイター)
野心に費やすも、人の一生。野心だけに終わらないのも、人の一生。 荒れ地を耕す主人公の姿に、北の大地を開拓した亡き先祖を思った。 貧困も富も同じくらい心を翻弄するが、翻弄されながら生きるのが人なのだと、本作は伝えてくれる。 いま、生きていることをつよく感じる。こんな映画が観たかった。
桜木紫乃(作家)
孤独、野望、尊厳、慈愛、無念、後悔、絶望、成長・・・ すべての感情を目だけで魅せてくれる、マッツ・ミケルセンの演技をじっくり堪能できる映画。 瞬きをするのももったいないほど寡黙で美しい演技です。
岡田惠和(脚本家)
マッツ・ミケルセンの真骨頂。 孤高で静かなる空気を纏いながらも、深部に温もりと狂気を感じさせる表現に誰もが息をのむ。 広大な自然に、ちいさな人間の営み、やがて氷が解けるように繊細な心情の移ろいが作品の奥行きを演出する。
寺嶋夕賀(映画コラムニスト)
これは“哀”をのりこえ、出“会い”、そして “愛を耕すひと”たちの物語です。 マッツ・ミケルセンにすべての感情を揺さぶられるエモーショナルなエンタテインメント。 主人公の最後の選択を僕は支持します!
杉山すぴ豊(東京&大阪コミコン プレゼンテーター)
孤独な者たちが寄り集まる「擬似家族」モノの新たなる傑作。 難攻不落の荒れ野は舵がきかず、迫り来る悪意と暴力は容赦がない。 苦しい映画である。苦しいが、固く真一文字に結ばれたマッツの口がほどけたあの瞬間、 筆舌に尽くしがたい幸福感とともに「この映画を観て良かった」と心の底から思わされた。
ISO(ライター)
寡黙な夢追い人が挑むのは、不毛の荒野だけではない。 他者の尊厳を摘み取る悪辣な既得権益もまた敵となる。 畳みかける理不尽に、何度も挫かれ折れそうになった。 だが目を離せなかった。隅々まで魂が宿っていたから。 不屈にして肥沃。この映画は、観客の心をも開墾する。
SYO(物書き)
野心と冷淡さを抱えた孤独な軍人の心に芽吹く愛は、 荒涼とした不毛の大地を粘り強く耕す物語と重ねられていく。 本作で魅せた、静謐さの奥底に温もりの灯がともる表現こそ、マッツ・ミケルセンの真骨頂。
中井圭(映画解説者)
時代は違えど、現代の日本にも通じる不条理が描かれ、 人生において本当に大切なものは何かを問いかけてくる。 マッツ・ミケルセンの素晴らしさが、たえず匂い立つ映画でした。
新谷里映(映画ライター)
※順不同・敬称略