監督自身を投影したゲイの少年は、家、食事、そして尊厳のため海兵隊に志願する。 男性社会の一員となるための旅は、むしろ男性社会をグラデーションのように分解し 「なぜ彼らは志願するのか?」についての多様な事情を照らしていく。 血の通った差別者と対峙しつづけた人間だけが描ける、赦しに満ちた観察の数々があった。
安堂ホセ(作家)
紛れもないリアルな米軍映画。 だが戦場ではなく、黒人で同性愛者の闘いが克明に描かれており、時に『ムーンライト』のように心をひりひりさせる。 最も過酷な海兵隊のブートキャンプが、こんなにも胸に深く突き刺さるとは。 ウーラー!
杏レラト(映画評論家)
ブラットン監督がかつて経験した深い孤独がジェレミー・ポープの瞳に宿り、主人公・フレンチを蝕む剥き出しの痛みが真実であることを思い知った。 この物語は社会から弾かれ、孤独を抱え、居場所を持たぬ人々の声となり、「私たちはここにいる」と力強く叫んでいる。
ISO(ライター)
ここで描かれるのは訓練の過酷さだけではない。 主人公は個を滅するのではなく、むしろ「自分」を貫くために歯を食いしばり、すべてを乗り越えようとする。こんな生き様があるのかと、彼の成長ぶりから一瞬も目が離せなかった。
牛津厚信(映画ライター)
自らの体験にまっすぐに向き合うと ここまで観る者の胸を強く、深く抉るものなのか。 迷いと絶望、忍耐と決意。監督の切実な過去が、眼差しとなって俳優に憑依する瞬間、われわれは目にすることになる。言葉では尽くせない自尊心と愛の真実を……
斉藤博昭(映画ライター)
一人前になる前の“人生の助走”が、リアルかつポエティックに映し出される。 胸が痛み、胸が熱くなる、良質な青春映画。 “特別な青年の特別な物語”という前提は、鑑賞中に吹き飛ぶはず。
佐藤ちほ(映画ライター)
僕は彼を知らない。時代の空気も、社会の表情も。 その痛みの真実に、己が心身ではたどり着けない。 でも、映画が断絶を埋める。孤独ではいさせない。 ここで、共に生きる。魂の連帯を生む愛の物語だ。
SYO(物書き)
怒り、悲しみ、孤独。 そしてそれを生み出す、有毒な男性性と有害な社会。 胸糞悪さから、それでも目を背けられない。これが現実だから。
竹田ダニエル(ライター)
他人を守る。その利他的な在り方が自分自身を確かにしていく。 日本社会はフレンチをどう受け止めるだろうか?ウ〜ラ〜!
ダースレイダー(ラッパー)
環境に恵まれないフレンチが自らより厳しい環境へ。 当たり前になった多様性時代にフレンチの苦労と根性に圧倒される。 観終わると、「任務ご苦労様」 (Thank you for your service)と画面に声を掛けたくなった。 自伝作品だけに説得力がある。 この映画に敬礼! フレンチが「軍軍」成長します!
デーブ・スペクター
(放送プロデューサー)
セクシュアリティによって母に拒絶され、軍でも孤立する青年の愛と尊厳の物語を、感情を煽ることなく95分に収めるシャープな語り口と編集が秀逸。 たとえ否定されても対話を諦めない姿勢の重要性が、現代に響く。
中井 圭
(映画解説者)
どんな地獄でも絶対に曲げられない信念を“自分”と呼ぶならばこの物語は“自分”を知るための地獄巡りの旅だ。 自分を貫くことがこの世を生き抜く希望となり、最強の反抗になる。
ビニールタッキー
(映画宣伝ウォッチャー)
いちばん愛されたい人から愛されない悲しさ。 それを乗り越えるために、フレンチは過酷な挑戦をする。 生きづらさを抱えた者が、自分の居場所を見つけるために挑む魂のブートキャンプ。 アニマル・コレクティブのサントラ、サーペントウィズフィートの主題歌もフィットして、息が止まりそうなほどエモーショナル。  
村尾泰郎(映画/音楽ライター)
鬼教官の苛酷なシゴキが炸裂するブートキャンプもの―― しかし『フルメタル・ジャケット』とも、もちろん『愛と青春の旅立ち』ともまったく異なる個性が映画の細胞となる。 血が滲むような、愛と居場所を求める青年の必死の彷徨。 新鋭監督のナマの人生が詰まったオートフィクション(自伝的創作)が定型を独自に刷新する傑作だ。
森直人(映画評論家)
許す/許さない、認める/認めない、ではない。 セクシュアル・マイノリティは共に生きているのだから。 抑圧と不寛容が生むものは負の要素しかない。いい意味で「放っておきあえる」文化が育つことを切に祈る。
よしひろまさみち(映画ライター)
支離滅裂な環境は人の人生を変えてしまうが、 誰しもが、自分で決めた人生を進む権利を持っている。 自分らしく自由な選択をしたことを認めて受け入れる世界に早く変わって欲しいと思う。 フレンチの選択はとても過酷ではあったが、今ここで勇気をもらっている私がいる。
五十嵐LINDA渉(アートディレクター)
※敬称略/順不同